赤松音呂ENGLISHJAPANESE

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チジキンクツ
サウンド・インスタレーション

chijikinkutsu

 

作品名「チギキンクツ」とは「地磁気」と「水琴窟」を組み合わせた造語です。 「地磁気」とは地球が持つ磁性で地球上のどこにでも常に存在しているにもかかわらず人には感じることができない力でです。しかし、大航海時代よりだいぶ前から地磁気を利用したコンパスが役立ってきましたし、現代では電子化されたデバイスとしてスマートフォンに内蔵されています。また渡り鳥、蜜蜂、ある種のバクテリアの行動に地磁気が関係しているという研究がなされています。美しいオーロラも地磁気と密接な関係があります。16世紀の科学者ウィリアム・ギルバートは自著の中で、磁気を帯びた地球は生き物のようだ、と書いていますが、現代においてもその原理は完全には解明されていません。
もう一方の「水琴窟」とは、江戸時代より伝統的日本庭園の装飾の一つであり、手水鉢近くの地中の瓶に水滴が落下し、反響する音を楽しむ仕掛けである。日本人は古来より、虫の声や松風といった音をあるがままの自然として受容するという独特の感性を持ち、この繊細な感覚からこのような装置が生まれました。ちょうどこの作品を制作していた時期に京都のお気に入りの寺を訪れる機会がありました。その寺は山中の一番奥まったところに建っています。大きな五葉松の庭があり、その片隅に水琴窟があります。その音を聞いたときに自分の作品に似ていると感じました。後にこのことが作品のコンセプトを膨らませることになったのです。
この作品には電子装置が組み込まれていますが、コンセプトは科学や技術の実証主義や多くのサウンド・アートがその基礎を置いている構築的な西洋音楽的な理論から来ているのではありません。通常は科学の分野で扱われる地磁気の作用を取り入れ、日本の自然観の文脈の中で繊細な音に展開したサウンド・インスタレーションに仕立てました。これは幾つかの素材によって成り立っています。水、縫い針、グラス、銅線です。縫い針は表面張力の作用で水に浮いて、あらかじめ磁化しておいた針は地磁気の作用で北を向いています。PCから送られるタイミングデータによってコイルに電流を流すようになっています。そして銅線に流れる電流によって針が動きグラスに当たり音を発します。
ミニマムな表現によって音が際立ち鑑賞者は音に集中できるようになっています。また余計なものをそぎ落とした静的な視覚表現によってグラスの中の針の小さな動きがむしろ強調されています。
丸いコップの水面に浮かぶ針に地磁気が作用していることから、それは小さな地球のようです。微細な音は鑑賞者の感覚を研ぎ澄まし、小さい音であればあるほど感覚が鋭くなります。そうするうちに音は鑑賞者の外部にあるのではなく内部にあると感じられるのです。

 

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