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Perhaps, art begins with the fireflies
EOX-1億年前の蛍の光
2022 インスタレーション


現代の蛍から発光に関わる遺伝子を抽出し、そのDNA配列を基に推論的解析法によって祖先配列復元をおこない、緑色に輝く古代の蛍の発光物質ルシフェラーゼを蘇らせた。復元したルシフェラーゼにルシフェリンと酸素を混ぜることで古代の蛍の発光を暗室内で再現した。

その前室にはルシフェリンとルシフェラーゼの分子模型、蛍のCTスキャン映像、標本、蛍の生物発光に関する研究論文を展示する。また、蛍を描いた古いリトグラフ、浮世絵、絵本、白亜紀に生息していた小型の羽毛恐竜Eosinopteryxの見た世界を描いた詩などを展示し、蛍に触発されて生まれた科学と文化の資料で、知識の面からインスタレーションを支える。

ジル・ドゥ―ルーズ&フェリックス・ガタリは「芸術は、おそらく動物から始まった」と彼らの著書「哲学とは何か」で語った。オーストラリアの多雨林に棲む鳥、スキノピーティス・デンティロストリスは切り取った葉を裏返して敷き詰めてステージを造り、複雑な歌を他の鳥の音色を合成して歌う、その様子からこの鳥は芸術家だと言ったのだ。私は彼らがダーウィンとユクスキュルを参照しながら展開する思想から、宇宙のカオスから生まれた動物の求愛の性本能が芸術の起源になったと考えた。求愛行動をする動物は鳥だけでなく魚や昆虫にもあり、蛍は光によっておこなう。バロック音楽で使われているリトルネロ(リフレイン)のように、蛍のテリトリーでおこなわれる不思議な光の明滅は求愛行動のスペクタクルである。芸術の原点を求めて、一億年前の緑色の光を暗い展示空間に再現した。暗闇で無数の光が動く様は羽毛恐竜が魅了されたであろう「Umwelt(環世界)」である。

共同制作者 大場裕一略歴
1970年札幌市に生まれる。1994年北海道大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了。1997年総合研究大学院大学大学院生命科学研究科博士課程修了。名古屋大学大学院生命農学研究科助教などを経て、現在、中部大学応用生物学部環境生物科学科発光生物学研究室教授、博士(理学)。

協力
中部大学応用生物学部環境生物科学科発光生物学研究室
高松市美術館学芸員 牧野裕二

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